| 腰痛・ぎっくり腰 仙台建設業協会会報2007年3月掲載 |
腰痛は、整形外科を訪れる患者さんの訴えで最も多いものの一つです。腰痛は人間が二足歩行を始めたときから始まったといわれています。人間の骨格も基本的には他の哺乳動物と同様の形態をしています。四足歩行用の骨格で二足歩行を行うわけですから、腰部にかかる負担がどうしても大きくなってしまうのです。したがって腰椎(腰の部分の背骨を腰椎と呼びます)などに異常が無くても腰痛が出現します。

腰痛は、感冒等の急性感染症や膠原病、アルコール中毒などの全身性疾患の部分症状として現れることもあります。また胆のう炎、膵炎、憩室炎などの消化器の炎症や、十二指腸潰瘍などの消化管潰瘍、尿路結石、卵巣や子宮の疾患などの関連痛として現れることもあります。これらのような症例の人が直接整形外科を受診するのはそれほど多くはありません。発熱や腹痛など、原因となった疾患に特徴的な症状が先行して出現するため、内科や婦人科などを正確に選択して受診しているようです。しかし疾患が慢性化するとこれらの症状が判然としなくなり、腰痛だけが気になるような状況になることがあるので注意が必要です。
外来を訪れる比較的年齢の若い腰痛患者の大半は、いわゆる筋筋膜性疼痛と呼ばれるものです。腰椎には大きな異常はないが、体を支えるための筋肉の緊張が亢進し、その状態が続くため痛みが生じるというものです。発症には、生活習慣や作業姿勢などの環境因子が大きく関与するといわれています。予防のためには、腹筋や背筋など体幹筋力の強化が重要ですが、環境因子の改善も重要です。
中年以降の腰痛で最も多いものは、変形性脊椎症によるものです。これは腰椎が加齢で変化を生じ、動きが悪くなるとともに痛みが生じるものです。痛みは体位変換、重労働や同一姿勢を続けることで増大し、安静にすると軽減します。また、起床時あるいは動作開始時に痛みが強く、起床後しばらくすると軽減し、夕方になると再び悪化する傾向にあります。 痛みがある間は、痛みが悪化させるような動作に近づかないのが大事です。痛みが消えたら、体操など徐々に体を動かし、体が硬くならないように努めましょう。軽いスポーツを続けることが痛みの予防に有効です。
ほかにも、腰痛を起こす腰椎の変化は腰椎分離症や腰椎すべり症などたくさんあります。骨にこのような変化があっても必ず痛みが出るとは限りません。大きな負担がかかったり、筋力が低下したりするとそれをきっかけとして痛みが出現すると考えてください。したがって、痛みが無いときの備えが重要になります。普段から無理な姿勢を続けないように心がけ、体操をして柔軟性を保ち、体幹筋力の強化を図ることが大切です。しかし、骨の状態によっては、これらの対策が望ましくない場合もあります。一度、腰椎の検診を受けて骨の状態を知っておくといいでしょう。
実は、症状が腰痛だけだと、手術が必要になるほど深刻な状況にはあまりなりません。腰痛に伴って下肢に症状がある場合は要注意です。左右どちらかの下肢に痛みがあったり、歩くと両下肢のふくらはぎに締め付けられるような痛みが出現する、このような症状は危険信号です。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の可能性があります。
ところで、ぎっくり腰という言葉をよく聞きますが、実はこれは正式な病名ではありません。ですから、人によってぎっくり腰の内容が違います。多くは不用意な体位変換や重量物の挙上などの動作に伴って突然発症する強い腰痛を指すことが多いようです。ただのぎっくり腰だなどといわずに、原因をはっきりさせるためにも早めに受診してください。
担当 登米 祐也
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