腰部脊柱管狭窄症 河北新報「診察室」2002・5・29掲載分 |
足の裏に違和感や痛み/柔軟体操、温熱が有効
質問:1年ほど前から足の裏側にもちやガムがくっついたような違和感があります〔70代・女性〕
◆何かの病気ですか。
ご質問の内容から判断すると、腰部脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)症の可能性が高いと思います。腰椎(ようつい)には馬尾神経や神経根などの神経組織を収納する脊柱管と呼ばれる管があります。さまざまな原因によりこの脊柱管が狭くなると、中を走っている神経が圧迫されます。腰椎部の神経組織は両下肢を支配しているので、その部分に症状が出てきます。
◆脊柱管が狭小化するのはなぜですか
脊柱管の中にある黄色靭帯(じんたい)が肥厚したり、腰椎と腰椎の間にある関節(椎間関節)が変形するために生じます。また上の腰椎が下の腰椎に対してからだの前側にすべる病気があります。変性すべり症といいます。この病気でも脊柱管狭窄の症状がみられます。
患者は50歳以上に多く、いわゆる脊柱管狭窄症は男性に、変性すべり症は女性に多く見られます。
◆症状について教えてください。
患者さんからよく聞く症状は、靴の中に小石が入っている感じがするとか、玉砂利の上を歩いているようだといった足の裏の違和感です。ご質問にあるように、足の裏に何かがくっついているようだという表現もよく聞かれます。
ほかにふくらはぎが締め付けられるような感じや、しびれや痛みが出ることもあります。症状が進行すると下肢の筋力低下やぼうこう直腸障害が出現することもあります。脊柱管狭窄症のもっとも特徴的な症状は間欠性は行と呼ばれる症状です。
◆間欠性は行とは
歩き始めには症状は軽いのですが、しばらく歩くと下腿(かたい)部のしびれや痛みが強くなり歩行が困難になります。立ち止まったり、しゃがんだりして少し休むと症状が楽になり、また歩けるようになります。
注意しなければならないのは動脈の病気でも間欠性は行が出現するという点です。閉塞(へいそく)性動脈硬化症などで下肢の血流が障害されてもこの症状が出ます。この場合は足の甲の動脈の拍動が弱くなっていたり、姿勢を前かがみにしても症状が良くならないなどの違いがあります。
◆治療法は
脊髄(せきずい)にかかる圧力をへらすことが治療のキーワードになります。
腰部の柔軟体操や腹筋の強化体操を指導します。牽引や温熱療法も有効です。
脊髄の血流を改善する薬剤を使うこともあります。また症状によっては腰椎の前屈を維持するコルセットも有効です。多くの患者さんはこれらの対症療法で日常生活は可能です。
日常生活に大きな障害があったり、筋力の低下が強い場合やぼうこう直腸障害がある場合は、椎弓切除術や開窓術などの手術を行います。
◆アドバイスをお願いします
この病気は無理な姿勢をつづけるなど腰に負担をかけると悪化します。普段から日常生活に気をつける必要があります。腰椎の柔軟性も重要です。体操もできるだけ続けるようにしましょう。一度、整形外科でアドバイスをうけてください。 担当 登米 祐也
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