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   坐骨神経痛           河北新報「診察室」2003・2・12掲載分
           
               原因特定へ検査が大切/神経根の通り道圧迫

質問:坐骨(ざこつ)神経痛に悩まされています。尻から太ももにかけてしびれるように痛みが走ります。神経痛は治らないと聞きますが・・・(60代・女性)

◆坐骨神経痛とは。

 はじめに坐骨神経についてですが、これは腰椎(ようつい)から出る神経根と、骨盤の中心となる仙骨から出ている神経根が合わさったものです。下肢の知覚と運動を支配しています。
 この神経に何らかの異常があると、坐骨神経の走行に沿って臀(でん)部から大腿(だいたい)部後面、下腿にかけて走るような痛みが出ます。時にはくるぶしから足の指にまで痛みがあります。「下肢にどーんと来る」「ぴりぴりする痛み」「突き刺さるよう」などと表現されます。じっとしていても痛かったり、寝付くことさえままならないこともあるのです。

◆原因にはどんなものがありますか。。

 大きく分けて二つのタイプがあります。一つは坐骨神経の組織そのものに異常があるもの、もう一つは腰椎の神経根に異常が認められるものです。
 前者では神経組織へのウイルス感染や腫瘍(しゅよう)などが考えられます。ウイルス感染では、小さな水ぶくれのような発疹(ほっしん)が神経に沿って帯状に現れる帯状疱(ほう)疹が有名です。最初は風邪のような症状ですが、その後発疹が現れるとともに痛みが出てきます。以前はとても苦労しましたが、現在は抗ウイルス薬の進歩で痛みを残すことは少なくなりました。また、腫瘍による痛みの場合は基本的には手術療法で対応することになります。
 ただし、原因として圧倒的に多いのは、神経根の異常によるものです。

◆具体的には

 最も代表的なのが椎間板ヘルニアです。背骨をつなぐクッション役をする椎間板が物理的な圧力を受けて外にはみ出してしまう病気です。椎間板のすぐそばにある脊髄(せきずい)馬尾神経から枝分かれした神経根が圧迫され、その先にある坐骨神経が刺激され、痛みやしびれを感じることになるのです。
 三十代の働き盛りが突然かかりやすく、重いものを持つ機会の多い人や同じ姿勢を長い間続ける職業の方に多いようです。
 質問の方の場合、60代という年齢と症状が長引いている状態から、むしろ変形性腰椎症が考えられます。加齢により腰椎の変形や椎間板の変性が生じることにより、神経根の通り道が狭くなり圧迫を受け、その結果、坐骨神経痛が生じます。脊柱管狭窄症やすべり症でもこれと同じようなことが起きることがあります。

◆診断や治療について教えてください

 原因によって治療法は異なりますから、「犯人」捜しが大切になります。腰椎が原因と思われる場合にはMRIなどによる検査で原因を特定します。
 椎間板ヘルニアや変形性腰椎症ではまず保存療法を実施、牽引や体操で痛みが和らぐようにします。痛み止めなどの薬も有効です。症状の進展によっては神経の異常部位を正確に把握して手術に踏み切ることも考慮に入れます。椎間板ヘルニアでは、時に痛みがとても強くなることがあり、そうした場合には神経ブロックによる治療をまず行います。お近くの整形外科医に相談してみてください。
                 担当 登米 祐也